場所は新宿区内某所

スーパーインテリジェントビルが乱立する超高層オフィス街の足元にひっそりと建ち続ける築50年のおんぼろアパート。今はもう無人の木造建築・・・このまま時間が経てば確実に廃墟です。もしかしたら周囲からは煙たがれる存在なのかも知れない。

でも今回、それを再生させました。アパート(共同住宅)をシェアオフィスにコンバージョン。

日本瓦の屋根に竹小舞下地の土壁に漆喰塗りの内壁・・・。なかなか興味深い仕事だったので着工・解体時の姿も貼っておきます。日本の在来木造住宅の美しさを感じてもらえるかと。そして新築同様にピッカピカに仕上げてしまってはおもしろくない。歴史と風格が表面に残る感じがちょうどいい。耐震補強して断熱して遮音して・・・。結構手間はかけているけど極力躯体はあらわしたい。 「なにもしてない感」は重要です。

不特定多数の人が出入りするオフィスとなると外観も手を抜けません。既存外壁には極力手を加えずに最小限の補修をしてから木製ルーバーでお色直し。樹種はスギやレッドシダーよりも耐久性のあるセランガンバツを採用。内装は懐古的な印象を基本にしつつ鉄筋やモルタルなどハードな素材をアクセントに採用。

「この家にそこまでやる価値があるの?」「建てなおしたほうが安くて早いでしょ?」「こんな建物にお金かけてもったいないよ」

施主、職人、設計・・・誰かひとりでもそんなことを思ってたらいいモノなんてできません。でもこの現場は大丈夫、最後まで施主も含めてみんなで作った宝箱です。